『食道裂孔ヘルニア』 健康メモより
最近では、一般的にヘルニアと聞くと腰痛などの原因となる腰椎の椎間板ヘルニアを思われるかたが多いのではないでしょうか。

ヘルニアとは、実際、椎間板ヘルニアを指す方が近年では多いのですが、実は消化器(食道・胃・小腸・大腸など)の病気の中にはヘルニアと病名がつくものがたくさんあります。また、本来、体の中の臓器が体腔外へ脱出することを言うのですが、最近はもっと広い意味で使われています。

そこで今回は、食道裂孔ヘルニアについて紹介します。食道裂孔といっても食道に孔(穴)があくわけではありません。
私たちがものを食べたり、飲んだりしますと口から食道を通り胃に届きます。

ところが胸とおなかを隔てているところに筋肉の塊でできている横隔膜という壁があります。そのため食道はこの横隔膜を通り抜けなければなりません。
この通り抜ける孔(穴)を食道裂孔というのです。
本来、この部分は靭帯でしっかり固定されているのですが、この靭帯が弱かったり、また、筋肉が伸展しすぎたり、腹圧が過大にかかったりすると横隔膜の下に収まっているはずの胃が胸の方へ脱出してくることがあります。

こういう状態が起こってもあまり命に関係するようなことはなく、無症状のことも多いのですが、時に胃液が食道内に逆流して逆流性食道炎を起こしたり、食べたものが詰まったり、食欲不振、便秘、また、胸痛や腹痛等を引き起こします。

そのために肺や心臓の病気と間違えられることもあります。
この症状は、肥満のかたや便秘、脊椎の前弯などがあるかたに起こりやすく、したがって女性や高齢者に起こりやすいといわれています。

治療としては内科的治療が主ですが、時には外科的治療が必要となることもありますので、気をつけてください。
(2000.6)


茨木市医師会 山本 孝紀